みなさんはホールや劇場まで足を運んで、直に演者さんを見に行くことはありますか?画面越しに見るパフォーマンスと違って、生で見るとその迫力に圧倒されますよね。
私が今まで見た中でダントツで記憶に残っているのが、『Mr.マリック超魔術』です。確か中学校に上がったばかりの頃、友達と見に行きました。横浜の関内ホールだったと思います。楽しみで楽しみで、前日眠れなかったほどです。
超能力ブーム
そもそも私は「超能力が使いたい」と誰よりも思っていた子供です。姉ちゃんたちに力ではかなわないので、超能力で懲らしめたいと常々思っていたのです。
しかも世は超能力ブームで、漫画のキャラも何かしらの能力を使っていました。少年漫画だけでなく少女漫画ですら超能力を使っていたんです。私も意味も分からず超能力のことを「ESP」とか言っていましたよ。そして「私は土属性かな…」とかも言っていました。大地をつかさどるのです。これは恥ずかしい!
そんな頃、ファミコンで『マインドシーカー』という伝説のゲームが発売されたんですよ。あのエスパー清田監修の「超能力開発・育成ゲーム」です。
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マインドシーカー
これに対してクラスの誰もが「クリアできない!クソゲーだ!」と言っていましたが、私は「これはクソゲーなんかじゃない!私はクリアして超能力を身につけてみせる!」と友達から借りました。(自分では買わない。クソゲーだもん)
そして驚くことに、クリアしたのです!
ただただボタンの連打でスプーンを曲げたり、時間のある限り何度もやり直して透視をしました。そして最後にエスパー清田が登場して、宇宙の神秘について語って終了です。本当にそれで終わりでした。
こんなにも頑張ってクリアしたので、学校でさぞ絶賛されると思ったら、「凄い暇だったの?」くらいの反応でした。
そして私には超能力など何一つ身につきはしませんでした。
もしこのゲームで何らかの超能力が身についたという方がいらっしゃいましたら、コメントでもTwitterでも何でもいいのでご連絡ください。お友達になってください。
Mr.マリックの凄さ
その頃並行して、Mr.マリックがテレビに頻繁に出るようになりました。Mr.マリックは自分のパフォーマンスを、「超能力」とも「マジック」とも言わず、「超魔術」と言っていました。そして「タネや仕掛けは?」「トリックなのか?」という疑問に、「ハンドパワーです」と答えるのです。
かっこよくないですか?
オリジナルジャンル確立してる。
この頃Mr.マリックは、テレビでたくさんスペシャル番組を組まれていました。あと矢追純一のUFOと外国の催眠術師もめっちゃやってた。それ全部見ていました。ちょうどビデオデッキが家庭に普及してくる頃で、ビデオに撮ってまで見ていました。いや、勉強しろよ。
まあ、そんなんで冒頭に書いたように、「キミの町にあのMr.マリックがやってくる!」となったらそりゃあウッキウキで見に行きますよね。実際行ったらもう夢のようでしたよ。
超魔術の世界
30年以上も前のことなんで、おぼろげですけどね。まず入り口で1人1本スプーンが渡されるんですよ。柄のところに「Mr.マリック」って刻印入りです。この時点で凄く嬉しい。
それを握りしめながら席に座っていると、マリックのあのテーマ(ジャジャジャジャ・ジャジャジャジャッジャーン~♪みたいなの)と共に、マリックが舞台に登場してきます。
普段声も小さく教室の隅にひっそり咲いていた私ですら、この時ばかりは我を忘れて「マリック~!!」と叫んでいましたね。そういう何かがあったね。マリックには。
その後数々の超魔術を披露しつつ、マリックは言うんですよ。
「一緒にスプーンを曲げてみましょう」
スプーンを??
マリックと一緒にスプーンを??
ホール内の観客全てがマリックに促されるまま、スプーンを持ちます。そしてマリックの「エイッ」という掛け声とともに、スプーンの先っぽのところを人差し指で曲げるのです。
私も友達も曲がりませんでした。
しかしマリックの「曲がった人はお立ち下さい」の声と共に、数人が「曲がった~!キャ~!!」と言いながらノリノリで立ち上がっていました。本当に嬉しそうな顔をしていて、私たち愚民はそれを羨ましそうに見つめていました。あの人たちは多分人生で一番のスポットライトを浴びたんじゃないかと思います。
そして私たちは、曲がらなかったスプーンを持って家に帰ったのでした。
カレー専用スプーンとなる
そのマリックスプーンは、レストランにあるようなしっかりした素材ではなく、今でいう100均(当時はそんなのなかった)で3本セットで売っているような素材でした。だから多分ピンポイントで力を入れれば、簡単に曲がると思います。スプーン曲げの練習にとてもいいアイテムだと思いますよ。
ただ私は生マリックを見て以降、けっこう急激に超魔術とかどうでもよくなってしまいました。そして「マリックのスプーンは軽くてカレーを食べるのに最適!」という結論に達し、カレーやシチュー等の時はマリックスプーンでご機嫌に食べる日々を過ごしていました。結果的に曲がらなくて良かったんだ!
どっか行っちゃった
それでね、私は結婚する前も一人暮らししたりして、実家を出たり入ったりしていたんですが、確実に30歳まではそのスプーンを愛用していた記憶はあるんです。
しかしある日実家に行った時に、「あれ?そういえばマリックのスプーンは?」と気が付いた時にはもうなかったんですよ。親に聞いても分からない。
私が持ち出して引っ越しのいざこざで失くしたのか、親が断捨離時に捨てたのかも分かりません。ただ分かるのは、もう私の手元からマリックスプーンは消え失せてしまったということだけ。
これ、どう思います?
あの時曲がらなかったスプーン。カレーを美味しくしてくれたスプーン。猛烈な思い出をだけを残して消えていくなんて、超魔術だと思いませんか?
というのが今回のお話でした(^^) かなり綺麗にまとまったんじゃないでしょうか?
今回もくだらない思い出話にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
もしスプーンが見つかったら、改めてご報告いたします。