前回、親知らずを秒速で抜歯したお話をしました。
超有能な歯医者さんだったんです。しかし医者がいくら有能でも、実際に回復するのには私たち患者側の意識が大事ですよね。これはブラックジャックがいつも言ってることです。
患者になおろうという努力の気持ちがあってこそ 医者の治療はききめがあるんだ
ブラックジャック「されどいつわりの日々」より。
ちなみに女性だったらブラックジャックにガチ恋する時期って一度はありますよね。ピノコの気持ちメッチャ分かる。わかめ、先生あいちてゆ。
抜歯後の注意事項
抜歯が行われた後、歯科医師から抜歯後の注意事項が伝えられました。
当日は血行の良くなること、入浴・飲酒・運動などはダメ。刺激の強い食べ物もダメ。固い物も避けて。なるべく無事な片側で食べて。等のまあ当然のことが伝えられます。
その中でも先生が強く言ったことが「とにかく傷口を気にしないで！」です。
抜歯後の穴の中に血がたまって塊になるんですが、その塊こと「血餅（けっぺい）」というものが治癒を促進する重要なものらしいのです。
そしてその血餅がはがれてしまうと下の骨がむきだしになり、ドライソケットというメチャクチャ痛い状態になってしまうということです。これは大人でも泣いちゃうくらい痛い上に、ずっと痛みが続くんですって。
痛くて泣くとか想像しただけで怖い。
先生曰く、傷口が気になって舌で患部をいじったり執拗にうがいをすることで、血餅がはがれてしまうことがあるそうなんです。
だから「変に意識して患部をいじらないようにね！」とのことでした。
そう言われたら気になる
意識しないでって言われたら意識しちゃうのが人の常。恋ってそういうものだもん。この日から私の頭は「血餅」一色になってしまうのです。
朝起きて一番にすることは鏡を見て「血餅、ちゃんといてくれた」と安心すること。
ご飯を食べても「こんなに強く噛んだら血餅が離れちゃう！」と心配し、歯を磨く時も「血餅に触らないようにやさしーくやさしーく」といたわり、床についても「朝起きて血餅がいなくなってたらどうしよう！」と気が気じゃありません。
もしかしたら寝言でも「けっぺい…」とつぶやいていたかもしれません。
それほどまでに血餅は四六時中私の頭を占拠したのです。血餅に「金くれよ」って言われたら、「とりあえず30万でいい！？」とアイフルに走るくらい血餅に支配されていました。
ドライソケットが怖いんだもん
そんなんなったのもドライソケットが怖すぎるからなんですよ。ネットでドライソケットを調べると、やっぱり「痛い」のオンパレード。むしろ「痛い」以外の単語は出てこないくらいです。
歯って頭に近いから、痛みが響いて相当キツイのが想像できます。私のように想像力に能力を全振りしている人間からしたら、もう考えただけで痛くて泣いちゃう。
だから食べ物のほとんどが流動食かクタクタに煮た白菜。それと柔らかく茹でた麺。今回ばかりはコシとかほんとに邪魔で、グズッグズに煮たうどんやそうめんが主食でした。
だって、けっぺいが…血餅がいなくなっちゃったら困るもん…！！
もう脳内そればっかりですよ。ホストに振られた女にしか見えませんでしたね。
やっぱり人間ってちゃんと咀嚼してちゃんとした物食べないと、頭が働かないんだなって思いました。
闇に落ちる
ちゃんとした物食べてないから、とにかく力が出ないしやる気も出ない。美しい景色とか見ても全然癒えない。だからめっちゃ『銭ゲバ』見てました。「世の中銭ズラ」ってずっと言ってた。金のためならなんでもするズラ。
もう色んな気力がないのでベットに横になりながら、「歯を抜くって辛いね…」と夫に言ったところ、
「抜かなくてもいい歯を抜くからだよ」
って言われたんですよ。この言葉に私はハッとさせられたのです。
歯との別れと悲しみ
別に抜かなくても、治療でも良かった親知らず。「抜いて」と言ったのは私…。
大人になって、いつの間にか生えていた親知らず。20年以上もの間、美味しい物を一緒に食べ、悔しい時は強く噛みしめたであろう親知らず。「抜いて」と言ったのは私…。
そして夫がドアの隙間からこちらを覗き、チャオズみたいな声色で言うんですよ。
「今までありがとう、バイバイ」
こんなん泣くでしょ？
ドライソケットになりたくないとか、そんな自分のことしか考えていなかったことが猛烈に恥ずかしい。
「抜きます」と言われた時、歯は一体どんな気持ちだったんでしょうか。
今までずっと一緒にいた親知らずに、別れすら言っていなかったのです。
そばにいたいよ
君のために出来ることが僕にあるかな
いつも君にずっと君に笑っていて欲しくて
もう頭の中は秦基博さんの「ひまわりの約束」が鳴り響きます。
ごめん…そばにいてやれなくてごめん。
抜歯後の辛さは罰なのかもしれない
歯のことを思いやれなかった私に、歯から最後に私に伝えたかったものが痛みなのかもしれないですね。人って自分が辛かったことばっかり主張するけど、お前も人に辛い思いさせてるんだぞって、歯はそう言いたかったんじゃないのかな。
そんなことを思いながら、今日も私はもらった親知らずを眺めるのです。
ありがとう
そして、ごめんね
～ 【親知らず抜歯/後編】完 ～
親知らず抜歯のお話は以上になります(*^^*)
すっごい馬鹿みたいな話に、長々とお付き合いいただきありがとうございました！
最後に何をトチ狂ったか、今回のお話の主役である抜歯した親知らずの写真を載せたいと思います。
「ババアの歯」という、この世でトップクラスの不愉快アイテムだと思いますので、お食事中の方やグロ耐性のない方はここでお帰り下さいませ。
一応虫歯部分はバイキン君マークみたいので隠してありますし、背景をファンシーなホワイトクリスマス仕様にしておきました。あふれ出る不快感は軽減させたつもりですが、勇気のある者だけこの先に進んでください。これは忠告だ！
では、最後までお読み下さりありがとうございました(*^^*) みなさんも歯を大切にね！
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