前回昭和のお母さんたちの多くが大仏パーマ(おばさんパーマ)だったという記事を書きました。
頂いたコメント&ブコメから、大仏パーマだったお母様をお持ちの方が結構いらっしゃいました。(いつもコメント&ブクマ&スター&いいね ありがとうございます!チラ見だってめっちゃ嬉しいです!)
うちの母ももちろん大仏パーマでした。そしてなんと私は、「母が大仏パーマになった瞬間」、その時のことをはっきりと覚えているのです。
自慢の母だった
私が幼いころ、うちの母は髪が長かったのです。それをバンダナで後ろで一つにまとめていました。対して私は昭和の女児の定番である、ウォーズマンみたいなヘルメットヘアスタイルをしていました。自分の変な髪型もあり、母の長い髪がとてもかわいく見えました。
また、周りのお母さんが大仏みたいなパーマの中、うちの母はひと際おしゃれに見え、誇らしくも思っていました。私は母に対して、「うちのお母さんは世界で一番かわいい」、本気でそう思っていました。
テレビで女優さんが紹介されるたび、「お母さんの方が絶対かわいい!うちのお母さんは、お姫様みたい!」と純粋に家族に言って回っていました。母は「外ではそんなこと言っちゃだめよ~」なんて言ってましたが、心の中では「最高かよ!」ってきっと思ってたに違いありません。
そのくらい毎日「お母さんはかわいい」と思ってましたし、言ってました。
幼稚園から帰ってきたら大仏になっていた
ある日の朝、いつも通り「いってきま~す」と笑顔で幼稚園に行き、帰ってきたら母が大仏になっていたのです。
正確には髪を切って大仏パーマをかけただけなんですが、幼稚園児がその時受けた衝撃といったら、とても言葉に表すことはできません。
私はパニックに陥り、大声で泣き叫びました。「こんなのお母さんじゃない!」「前のお母さんを返せ!」近所中に聞こえるほど叫び、ひきつけを起こすくらい泣き崩れました。
大切なものがお姫様から大仏に変わった時、子供はそう簡単に受け入れられるものじゃないんです。しかもあんなにかわいく見えていた母ですが、髪が大仏パーマになっただけで、顔もそこら辺のおばさんになっていたのです。
そうです。元からお姫様などではなかったのです。その魔法が解けた瞬間だったのです。しかし子供だった私に、そんなことは到底理解できません。分かるのは目の前にいる大仏パーマのおばさんが、どうやら自分の母親なんだということだけ。
大好きなお母さんを取り上げられて、知らんおばさんが急に「今日から私がアンタのママよ」って来られたようなもんです。子供にそれはあまりにも酷というものではありませんか?私にできることは、ただただ泣き続けることだけだったのです。
パーマを当てただけなのに…
先程は子供だった私の目線からの状況説明でしたが、今思えば母は母で相当なショックだったと思います。
その当時30代半ばでしょうか。気分転換に髪を切り、ついでにパーマを当ててみた。家族の反応はどうかな?なんてドキドキした気持ちもあったかもしれません。
ただ、パーマを当てただけなのに…
嫁いだ時から舅姑と同居もしてる。亭主関白な夫のもと家事も頑張ってる。子供も3人産みました。毎日を一生懸命生きてる。それなのに、子供に泣き叫ばれ…大仏だのカミナリ様だのと指差され…挙句は「知らんおばさんあっちいけ」みたいな扱い…
ただ、パーマを当てただけなのに…
結果、ブチ切れる
泣く子に向かい母は怒鳴りました。我を忘れて怒鳴りました。
「うるさいっっ!!ギャーギャーギャーギャー泣くんじゃない!!こ・れ・で、いいの!もうこの髪型なの!!」
この髪型なの!!
時は流れ…
母はその台詞通り、しばらくその髪型を貫き通しました。
「かわいいかわいい」と母にベタベタしていた私も、親と子としての適度な距離をきちんと保つようになりました。大仏に変わったことが結果的に良かったのかもしれません。成長するって、きっとそういうことだと思うから。
私が高校に上がるころには「もうパーマはかけていない」と言っていましたが、髪質が変わったのかほんのりパーマ風の髪型に落ち着きました。しかしそんなことは、もうどうだっていいのです。どんな髪型であろうと、母は母なのです。
そんな母も今は70代になり、すっかり髪も真っ白になりました。
バンダナ→大仏→ほんのりパーマ風→真っ白
時代とともに髪型が変わっていった母。そしてその時を一緒に生きてきた私も、きっと色々変わっていったのでしょう。
思い出を胸に私は生き続ける
40年以上生きてきて、辛いこともいっぱい経験してきた私です。しかしどんなに辛くても、あの時、あの母の大仏パーマを見た時ほど激しく泣いたことはありません。そのくらい自分にとっては、深く心に刻まれた出来事だったのです。
この先、まだまだ色々な事が起こると思います。しかし私は大丈夫。どんな事にだって立ち向かえる。あの大仏の思い出が、私を強くしてくれたんですから…。